本年は三重県と愛媛県を中心にアコヤガイの大量へい死が発生しており、その後に残存したアコヤガイの量は、例年と比較して、地区や生産者によって差がありますが、三重県においては稚貝で2割から6割程度、母貝で5割から9割程度、愛媛県においては稚貝で2割から7割程度、母貝で5割から9割程度となり、あまり被害が発生していない九州を除きアコヤガイの不足が発生しました。
その結果、零細小規模で各生産工程が独立していて、人手不足が特に深刻となっている三重県及び愛媛県で大きな問題となっています。
こうした事態を踏まえ、日本真珠振興会では、10月8日に真珠産業連携強化協議会・生産開発部会を開催し、今後の対策等について協議を行いました。
そこでは、大量死の原因を特定するまでには至っていませんが、①今年の冬場の高水温、②夏場の急激な水温上昇、③潮の急激な変化、④餌不足、⑤不健康な稚貝の使用、⑥環境変化時の養殖作業、⑦近親交配が繰り返された結果によるアコヤガイの活力低下等が影響したのではないかとの認識が共有されました。
そして、今後の対策として、短期的対応としてはアコヤガイの確保(地域間調達・供給の促進や緊急採苗の取組)、中長期的対応としては養殖管理の適正化の推進(最近の生産環境に応じた養殖管理ポイントの作成等)、健康なアコヤガイ確保の取組(健康なアコヤガイ親貝の系統保存等)などの必要性があげられました。
弊会では、この議論を踏まえ、水産庁の指導・協力を得つつ、短期の生産減緩和策として産地間のアコヤガイの需要・供給のマッチング調査、中長期の生産体制確保として健康なアコヤガイの確保のための各産地の親貝系統や交配実態調査を開始しました。
さらに、これも水産庁の指導・協力を得て、業界及び一部の県試験研究機関と協力して、最近の海洋環境の下でのアコヤガイ養殖の管理ポイントを作成するなど、養殖管理を徹底していく準備を進めることにいたしました。
日本真珠振興会としましては、真珠振興法及び同法の理念を踏まえ、また水産庁をはじめ関係機関の支援・協力のもとに設置された連携強化協議会の枠組みを最大限に活用することによってアコヤガイ大量死の問題を克服していく所存でございます。
アコヤ真珠関係各位、並びにアコヤ真珠を愛する皆様方におかれましては、今後ともご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
令和元年11月
一般社団法人日本真珠振興会