真珠だより

2021.03.23 真珠だより ― 横田伸之SPの真珠こぼれ話

真珠の安さは自慢にはならない

真珠を選ぶ際、何を基準に選んでいますか?

大きさ、色、長さ、形など、お好みによって重視するところはさまざまだと思いますが、皆さんに共通して”価格”が購入を左右する重要なポイントの1つになるのではないでしょうか。

インターネットの普及により、あらゆる商品の価格比較が容易な世の中になりました。

真珠も同じように「大きさ」「長さ」「色」「鑑別・鑑定書の有無(*)」などの条件で、『はい!この条件で一番安いのはどれ??』と価格で比較していませんか?

しかし、これでは本当に貴方が探し求めている真珠には出会えなくなってしまうかもしれません。

真珠は貝が産み出す宝石。一見規格品に見えても厳密に言えばすべてが一点物です。たとえばネックレスであれば同じ大きさ、長さ、色であっても一本ずつその”品質”は異なります。

品質が違えば当然価格も違ってきます。

『でも鑑定書も同じものが付いているけど?』と思われるかもしれませんが、大半の鑑別・鑑定書はいわば合格証のようなもので、合格すればもらえて、不合格ならもらえません。
合格しさえすればボーダーラインギリギリでも、余裕で合格したものも、記載内容はほぼ同じです。

ですから、たとえ鑑別・鑑定書が付いていたとしても、おおまかに言えば品質なりの価格が付けられており、最安のものが一番お買い得とは言い切れないのです。

真珠の価格は毎年入札で大きさ、品質ごとに相場が決まり、入札を通さない取引であってもその相場に準じた価格で取引されています。

最上級のものが特別に安いはずはありませんし、どこか特定の会社だけが特別なルートで安く手に入れるなどということもできません。もしそんな特別なルートがあればむしろ割高になるでしょう。

もちろん皆さんそれぞれにご予算があり、価格が重要な要素であることは間違いありません。

その大切なご予算を最大限に活かすためにはどうすれば良いのか?

どうか、価格の比較に入る前に、真珠は宝石だということをもう一度思い出してください。

近年の真珠販売を取り巻く環境には、「最上級」という言葉や、さまざまな呼称を用いた見せかけの高品質が氾濫しています。

しかし真珠は宝石ですから、

希少だからこそ価値があり、高価なのです。
希少なものは決して安価にはなりません。

品質はその真珠の個性とも言えます。

品質の良し悪しは人間が決めた基準ですから真珠を作ってくれた貝には少し気の毒なのですが、たとえば形が歪んでいる真珠などは比較的リーズナブルです。

とはいえ、きちんとその真珠の個性に応じた価格が付けられているはずです。

個性と価格の関係性を飛び越え、最上級のものや、滅多にない希少なものが特別に安いということはまずありません。

いくら耳触りの良い言葉で飾っていたとしても安すぎる価格は自ら希少ではないと語っているようなものであり、宝石としては決して自慢できることではありません。

インターネットで価格順に並べる前に、できれば専門的な知識を持った店員さんがいらっしゃる専門店にご相談なさってください。

「真珠選びはお店選びから」と言われるように、販売店の専門的な知識の有無は真珠の購入において非常に重要です。

真珠は上手に選びさえすれば、必ず皆さんそれぞれのご予算に応じた最適、最善のものを手にすることができます。

プロのアドバイスをもとに、皆さんが一期一会の素敵な真珠に出会えますよう願っています。

*世界の宝飾業界において鑑定を行う対象はダイヤモンドだけとされており、その他のカラーストーン、真珠、珊瑚等については鑑定を行わないことになっています。また、鑑別書に品質評価の記載も行われません。
(※真珠検定委員会「真珠の品質に関する注意喚起とお願い」パンフレットより引用)

ですから、鑑別・鑑定書が付いているから良い、付いていないものは悪いということでは決してありません。

鑑別・鑑定書の有無よりも販売店による品質の説明が明確であり、何よりも貴方自身が惹かれる魅力がその真珠にあるかどうかが大切です。

 

SP(パールスペシャリスト) 横田伸之